このシリーズの概要
私は「週間グロース株ニュース」というシリーズのYoutubeを投稿しています。
その中では、上場来高値/年初来高値更新した銘柄をウォッチして、ざっくり説明をしています。
毎週見ていく中で、一度でも年初来or上場来の高値更を新銘柄は、数週間・数ヶ月にもわたって、更新を継続する傾向があることに気づきました。
ということは、「買って持っておけば、儲かるのでは!?」との思惑が、思わず頭の中をよぎりました。
一方で、
・なぜ高値更新が続くのか、そこに法則や共通性はあるのか等を私自身が知りたいと思った。
・対象銘柄の中には、IT系のSaaSの成長企業だけでなく、昔ながらの業態の企業も高値更新する場合が少なからずあることがわかりました。
おそらく、世の中の構造やトレンドの変化が影響しているのではないか、という仮説を検証したい。
といったことを考え、このシリーズでは注目銘柄を調べていきたいと思います。
目次
- このシリーズの概要
- 上場来高値/年初来高値とは?
- 上場来高値更新銘柄の調べ方
- 対象企業の選定理由と株価推移
- 会社概要
- 上場来高値更新の理由
- 直近の決算・中期経営計画
- 事業リスク
- 格付けレーティング
- プライム市場への適合状況
- まとめ
- Youtubeのご紹介
上場来高値/年初来高値とは?
・上場来高値 ※こちらの方が難易度が高い
上場した日以降で、もっとも高い株価を付けること。
・年初来高値
1月~12月の1年間の中で、もっとも高い株価を付けること。
ですが、年が明けて間もない時期は年初来高値が付きやすいため、
1月~3月の間は前年1月以降の株価の動きの中で比較します。
そのため、1-3月の間で最も高い株価を付けた場合には「昨年来高値」と表記されます。
上場来高値更新銘柄の調べ方
どうやって上場来高値更新銘柄を調べる方法ですが、
Googleなどで「株探 上場来高値」と検索すると、確認することができます。
(※株探=株式メディアのこと https://kabutan.jp/)
注意点としては、普通に検索すると古い記事が上位に表示されることがあるため、
下の写真のように、対象期間を絞ることをオススメ致します。
また、株探が発表する上場来高値更新は、大きく2種類あります。
1.本日の上場来高値銘柄
平日夜20時過ぎに、同日の上場来高値更新銘柄が公開されます。
2.今週の上場来高値銘柄
土曜日朝9時過ぎに、一週間の上場来高値更新銘柄が公開されます。
年初来高値更新銘柄の調べ方
私が知る限り、上場来高値は株探くらいしか情報として定期的に公開されていないのですが、
年初来高値であれば、様々な株式メディアにて確認することが可能です。
例えば、ヤフーファイナンスだと「株式」→「株式ランキング」で様々なランキングを見ることができますが、
ここでは、上場来高値ではなく年初来高値という項目があり、先ほどの定義の通り、少し意味合いが変わってきます。
ただ、これはこれで活用できる部分があります。
というのも、株探の上場来高値銘柄の対象は「19年1月時点で株式を新規公開し、東証1部、2部、マザーズ、ジャスダック市場に上場する銘柄」と定義されています(2021年8月時点)。
そのため、19年2月以降に上場した企業は、株探の上場来高値更新に載ってこないということになります。
そういう場合、上場して年月があまり経過していない企業は、ヤフーファイナンスの年初来高値更新を見るべし、ということができます。
対象企業の選定理由と株価推移
今回、なぜインターネットイニシアティブジャパン(以下、IIJ)を取り上げたのか。
それは、IIJは2000年よりも遥か前に創業しており、インターネット業界の中でもかなり歴史が長い会社になりますが、なぜ今頃になって上場来高値を頻繁に更新しているか、という点に非常に興味が湧きました。
実際に、株価は15年以上前に上場してからはずっと横ばい状態。2008年には最安値の179円まで下がりました。
ですが、2019年の後半あたり(コロナ前)から潮目が変わって、右肩上がりになりました。
会社概要
会社概要
高値更新の要因に触れる前に、簡単に企業概要を見ておきましょう。
インターネット企業としてはかなり古く、1992年の設立です。
資本金は229億円、従業員は連結で3805人もいます。
2006年12月に上場しています。
主要株主はNTT、NTTコミュニケーションズを足すと26%くらいの比率で筆頭株主がNTTグループということになります。
あと伊藤忠テクノソリューションズが4%、鈴木浩一さん(現在の代表取締役会長で長年社長をされていました)が4%保有しています。
事業内容
インターネットネット接続サービス(プロバイダー)、一番伸びている法人向けのクラウド事業(ネットワーク構築)、セキュリティー対策、格安スマホなどを展開しています。
業歴も長いことから多くの導入実績があり、大手中堅企業や官公庁を中心に、幅広く約1万3,000人のお客さまに導入されています。
上場来高値更新の理由
株価の潮目が変わったのは、2019年11月8日に発表した第2四半期の業績予想の上方修正です。
「第2四半期の業績予想と実績との差異及び通期業績予想の修正に関するお知らせ」で、売上予想が当初から2.4%プラス。特筆すべきは営業利益が予想より52%プラス、税引き前の四半期利益だと102%プラスになってます。
利益が一気に急上昇したことで、株価が急上昇しました。
その翌年、コロナの特需をじわじわ受けて、「2021年3月期第2四半期連結累計期間の前期実績値と決算数値との差異及び通期連結業績予想の修正(上方修正)に関するお知らせ」を発表します。
売上は当初予想より1%プラスで、営業利益は29.9%プラスしております。
コロナ禍を契機とした企業等のネットワークシステムへの需要増加を理由としています。
3ヶ月後、「2012年2月通期連結業績予想の上方修正に関するお知らせ」を出します。
売上の増加は0.5%プラスで営業利益は19%プラスとなっています。
理由としては、企業の ICT( Information and Communication Technology)サービスの利活用の進展等に伴い、法人ストック売上高が想定以上に伸長し、特にネット ワークサービスの売上総利益が大幅に増加したということです。
要は、法人向けの売上が上がり、そこの利益率が良い、もしくは好採算の案件が取れているということになります。
以上のことから、業績予想の上方修正を連発したのが株価上昇の大きな理由になっています。
直近の決算・中期経営計画
売上構成
直近ストックの収入が83.7%、法人のみで52%と、大部分を占めています。
利益率の推移
下の折れ線グラフを見ると、全体的に右肩上がりで、利益率が上昇しています。
特にネットワークサービスの上昇が大きく直近は20%を超えており、利益率の底上げとなっています。
FY2020総括
先ほどの上方修正で、売上高はそんなに伸びてないようにお伝えしました。
ですが、直近の決算の内訳は、法人のストック売上関係の各サービス、IPサービスは13%プラス、アウトソーシングは10%プラス、クラウドサービス11%プラスと売上の中でも法人関係は結構伸びているということです。
30年以上の会社にも関わらず、この部分が伸びているのは、コロナ禍で企業のネットワーク化出てきたと考えられます。
増配
FY 19までは13.5円がFY20では一気に29.75円まで上げてきました。
さらに今回の見通しでは39円を予定しており、株価が上がる要因になると考えます。
中期経営計画
前年までの中期経営計画では、売上は目標2,200億で実績2,130億で若干未達でしたが、営業利益は目標100億円で実績142億円ということで圧倒的に超えました。
こうしたことからも利益率が高まっていることがよくわかります。
一方で、営業利益率は6.7%であり、それ自体は業界的にも特別高いわけではないです。
次のFY2021-2023中期経営計画目標では、2024年3月期に売上高2,800億円、営業利益率9%超を上げています。
暗号資産の会社を他社と共同設立、M&Aの機会の追求など新規の部分にも投資をしようという意欲が感じられます。
事業リスク
有価証券報告書の中から事業リスクを紹介
- 国内売上高96%で海外に子会社を持っていますが、売上にあまり貢献はしていない
- 法人向けのサービスが多いため、大型顧客の解約のリスクがあります。
- 様々な事業投資をしていて、巨額投資となっています。
- mvmo格安スマホの回線をドコモから、法人関係はNTTコミュニケーションズ、KDDIから借りていネットワークを外部から借りていて、その部分の特定のリスクは考えられます。
競合について
法人向けネットワークサービスの主な競合はNTTコミュニケーションズおよびKDDIを含む通信キャリア、それらの関連会社ということになります。
NTTコミュニケーションズは株主で仲間でもあり、競合でもあるという複雑な関係です。
またシステムインテグレーションの競合は日本電気、富士通、NTTデータ等です。
売上の中でも法人向けのシステムインテグレーションのシステム構築は、3月まで延充しています。
IIJと同様に、多くの企業は3月末決算であり、企業が予算を消化し切るために3月末までに駆け込みが起きやすいため、4Qの決算が他の四半期よりも実績が上がりやすいことは押さえておくべき点になります。
有形固定資産、のれん及び無形資産の減損損失の形状について
固定資産やのれんをそれなりに保有している場合、注意すべきは「減損損失」です。
これは固定資産の価値が取得時より一定程度下落したと判断されると、損失に計上される可能性があります。
例えば、M&Aを行なって現時点でののれん残高は60億くらいあります。
仮に最悪のケースとして、その買収した企業価値が無くなり0円となると、IIJの利益は100億円くらいのため、利益の半分は一気になくなるというリスクはあります。
1部上場企業だったら基本つきまとうリスクではあります。
保有投資有価証券の価値の変動について
IIJの関係会社以外にも、事業関係の強化を目的とした事業会社に対する出資をしています。
大型顧客のリクルートや複数企業の株を保有していますが、そうした企業が業績不振等になると株価が下がるため、IIJは損失を出さないといけなくなります。
現時点では、上場株式83億円、非上場株式14億円、ファンド出資金29億円の投資有価証券を保有しています。
格付けレーティング
2021年7月下旬の記事作成時点で、3,540円の株価です。
それに対し、各証券会社の直近の格付けレーティングは以下の通りです。
【①強気・買い・オーバーウェイト】
みずほ、東海東京、岡三、大和、クレディ・スイス、ジェフリーズ
【②中立・ニュートラル】
野村証券SMBC日興
特に東京東海、岡三は6月に入り、ニュートラル→強気に格上げしています。
また、最近の株価のターゲットプライスは概ね4,000円以上の評価をしています。
プライム市場への適合状況
2022年4月から東京証券取引所の市場再編が実施され、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場の3つに新しく分類がされます。
2021年6月末時点をもって、東証が各上場会社に対して、どの市場に該当するかという合格通知を順次発送しております。それを受けて、上場企業の中では、プライム市場に合格しましたというプレスリリースを出している会社も出てきています。
IIJも現時点ではプライム市場に関するリリースは出しておりませんが、現在東証一部のため、当然プライム市場に行くべきだと考えております。
IIJのプライム市場への試算
プライム市場の主な基準は大きく3つで①流動性、②ガバナンス、③財務になります。
IIJは流動性と財務は全く問題ないんですが、②のガバナンス流通株式比率というのが少し怪しい部分です。
基準では流通比率を35%以上にしなければいけません。
IIJの大株主の持ち株比率(2021年3月時点)を見るとNTT、NTTコミュニケーションズ、伊藤忠テクノサイエンス、鈴木会長というふうになってます。あと生命保険や銀行キャリアと自社が持っているという状態です。なので大株主はほとんど安定株主、特定株に該当します。他の外国、投信、浮動株3つを足しても34%にになり、35%に若干達していないです。
IIJは本日時点でプライム市場に合格しました合格しましたというプレスリリースは特に出していません。受けているけどあえて出さない方針なのかもしれません。
万が一プライム市場に入れないとなると、東証一部全銘柄を表すTOPIX指数が、今後新市場になるとプライム市場に上場している会社の全てを表すという定義が変わるので、自社の株が反映されないということになります。
そうすると、投資信託からの買いがなくなり、株価下落の要因にも繋がりかねないです。
まとめ ~今後と将来性は?~
IIJは8月10日に、第一四半期の決算発表を予定しております。
直近を見てみると、6~7月は毎週のように上場来高値を更新しております。
法人のストックの売上が非常に高いということで、今後の売上も安定的に入るということから、業績は堅調なものがずっと続くと予想しております。