【税理士】若原 義敬
2008年に大手の税理士法人に就職後、税理士試験に合格。
その後、ボクシングのプロライセンスを取得し、税理士として働きながらプロボクサーとしての活動を行う。2017年にプロボクサーを引退。
ベンチャー企業の経理を経て、2019年10月に若原義敬税理士事務所を独立開業。
数年前の暗号資産/仮想通貨と同じように、現在熱狂し始めているのが「NFT」です。
ところで、2017年、暗号資産/仮想通貨の価格が暴騰し、いわゆる「億り人」になった人が税金対策をしておらず、「税金地獄」となったことをご存知でしょうか。
税金地獄とはどのような状況か、以下をご覧ください。
こちらは2022年2月20日の記事です。
(出典:読売新聞)
次に、2020年3月に発表された、重い事例をご紹介します。
金沢地裁で懲役1年、執行猶予3年、罰金1,800万円の有罪判決が言い渡された。
(出典:読売新聞)
いかがでしょうか。結構怖い事例ですよね。。。
最近では、OpenseaなどのNFTマーケットプレイス(メルカリのような場)がでてきたことで、NFTの売買や仕入れたNFTアートを転売することも多くなってきています。
加えて、自身でNFTアートを作成して販売することで、税金の対象になる場面も起きてきています。
そんなわけで、この記事ではみなさまがNFTの保有や売買で税金に困らないように、NFTにおける税金と申告方法について解説いたします。
なお、NFTを利用するには、海外の暗号資産取引所を利用する必要があります。
その前提として、海外取引所に資金移動するためには、国内の暗号資産取引所を開設する必要があります。
下記に、2大国内取引所をご紹介しております。是非この機会に開設してみてください。
・コインチェック
【本記事で解決できるお悩み】
- NFTに関する法律はあるの?
- NFTの売買は税金の申告は必要?
- NFTにかかる税金の種類は?
【目次】
- NFTってなに?暗号資産/仮想通貨との違い
- NFTに関する法律や税金は未整備の段階
- NFTの取引内容別の税金について
- NFTの所得計算のポイント
- 所得計算に関わる情報の記録について
- 消費税のあつかい
- 必要経費の考えかた
- まとめ
NFTってなに?暗号資産(仮想通貨)との違い
2021年、大手が続々とNFT市場に参入し、NFT市場は急成長を遂げています。
NFT(ノン・ファンジブル・トークン)とは、日本語で非代替性トークンといいます。
非代替性トークンとは、デジタルデータを「この世でたった一つのモノ」と証明する仕組みです。
NFTひとつひとつにシリアル番号が振ってあり、この世に同じものは存在しないデジタルデータとするとわかりやすいと思います。
これまで簡単にコピーやデータの改ざんができたデジタルデータに、この世にたったひとつしか存在しないものと資産価値を証明することで、デジタルデータの販売や転売に高額な取引価格がつくことが多くなりました。
Twitterの創業者であるジャック・ドーシ氏が、最初に投稿したツイートをNFT化すると数億円で取引された実例もあります。
NFTの活用例として以下のとおりです。
・ゲーム
・会員権
・デジタルアート
・デジタルトレカ
非代替性トークンであるNFTに対し、同じブロックチェーン技術を使用した暗号資産(仮想通貨)は代替性トークンといいます。
どのビットコインでも同じビットコインであるのは変わらないということです。
たとえば、Aさんの1ビットコインとBさんの1ビットコインは、同じ価値であり、交換することが可能なため代替性があります。
NFTに関する法律や税金は未整備の段階
2021年12月において、暗号資産を規制する法律はありますが、NFTのそれはありません。
NFTは、暗号資産と同じくデジタル世界の中でおこなわれるため、その特殊性から法整備が追いついてない状況です。
ですが、この後の見出しにあるよう、一定の利益を得た場合は「確定申告が必要」です。
暗号資産を取り締まる法律は、暗号資産の取引が熱狂してきた中で発表されました。
NFTもおなじように、今後NFTを取り締まる法律が発表されるでしょう。
まずはNFTの売買により、利益が発生している場合には確定申告をしなければいけないことを理解しましょう。
そして確定申告をする場合は、現行の税制の仕組みや考え方にあてはめる必要がありますのでこれからご説明いたします。
NFTの取引内容別の税金について
一般社団法人 日本仮想通貨税務協会(JCTA)は、「NFTの売買で発生した利益は基本的には雑所得、しかし取引内容によって所得区分が異なる可能性がある」と見解を発表しています。
(出典:仮想通貨税務における諸論点の取扱いに関する見解)
そもそも雑所得とは何か
雑所得とは、「利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも当たらない所得」のことを指します。
具体的な例としては、このようなものが該当します。
- 公的年金等
- 非営業用貸金の利子
- FXの収入
- 副業に係る所得(講演料や原稿料、ネットショップ/オークションの利益、シェアリングエコノミーに係る所得など)
(出典:国税庁)
ポイントは、「20万円を超える場合は、確定申告が必要」という点です。
加えて、所得が高いほど税率は高くなり、最大55%が課税されます(所得税45%+住民税10%)。
給与所得と雑所得の対応方法の違いは、こちらのマネーフォワード社の図解が分かりやすかったので、以下に掲載します。
(出典:マネーフォワード)
今回の暗号資産やNFTに限らず、雑所得による納税者の割合は令和元年で70万人とのことです(国税庁調べ)。
同年度の全体の納税者は631万人おり、11%もの人が対象でした。つまり10人に1人です。
実際には、雑所得での申告がそもそも漏れている人も多いと思うので、申告すべき対象者はさらに多いと思われます。
【要注目】暗号資産/仮想通貨に対する国税庁の動き
今後のNFTへの税制面での影響可能性を知るうえで、過去の暗号資産に対する国税庁の動きが参考になります。
- 2017年に、暗号資産取引の利益を「雑所得」として確定申告の対象とし、取り締まりを強化。
- その後もSNS等で誤った情報が出回っていたため、2019年に全国の国税局に暗号資産などを専門とするプロジェクトチームを設置。
悪質な税逃れへの取り締まりを強化。 - 2020年の国税通則法改正で、国内の取引所から取引履歴に加え、顧客の氏名や住所の照会が可能となり、取引実態を追いやすくなった。
要は、年を追うごとに納税対象者への囲い込みが進んでいる、ということです。
【NEW!】
そんな中で、国税庁は2022年4月、「NFTやFTを用いた取引を行った場合の課税関係」のタイトルで、所得税課税の概要を発表しました。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1525-2.htm
要約しますと、次のとおりとなります。
- NFTが、暗号資産などの財産的価値を有する資産と交換できるものである場合、それを用いた取引は、所得税の課税対象。
(=財産的価値を有する資産と交換できないNFTの取引は、所得税の課税対象ではない) - 取得
- 役務提供の対価としてNFTを取得した場合、事業所得、給与所得または雑所得に区分
- 譲渡
- 譲渡したNFTについて、得た譲渡所得が譲渡したNFTの値上がり益と認められる場合、譲渡所得に区分。
(注)NFTの譲渡が、営利を目的として継続的に行われる場合は、譲渡所得ではなく、雑所得または事業所得に区分。 - 得た譲渡所得が値上がり益に該当しない場合、雑所得(規模等によっては事業所得)に区分。
- 譲渡したNFTについて、得た譲渡所得が譲渡したNFTの値上がり益と認められる場合、譲渡所得に区分。
結果的には、暗号資産同様、バッチリ課税対象になる場合が多い印象です。
NFTを取引する際は、十分に注意し、不明点は税理士等の専門家に相談してみましょう。
購入したときの税金
一般的に収入が発生して所得税がかかるのは、モノを売却して利益を得たときです。
通常購入した時には所得税は発生しません。
しかし、NFTを購入しただけで、課税の対象となるケースがありえます。
たとえば、以下の例です。
② 1イーサリアム(ETH)=50万円のときに、2ETH(100万円)のNFTを購入した場合
③ 値上がり分の80万円((50万円―10万円)×2ETH)が課税対象
このようになる大前提として、NFTは基本的にイーサリアム上のブロックチェーン技術を活用したサービスのため、支払いも暗号資産であるイーサリアムを使って行う必要があります。
そうすると、「現金→イーサリアム→NTF」という2段階の変換が必要となり、イーサリアムの価値の差額が課税対象になり得るというわけです。
具体的には、NFTの購入時に、ETHを一旦売却→日本円に換金したとみなされるため、換金の際に利益が発生していた場合、課税所得にあつかわれます。
暗号資産で商品を購入したときの考え方は、 暗号資産に関する税務上の取り扱いについて(FAQ)に記載されております。
参照: [暗号資産に関する税務上の取り扱いについて(FAQ)]
売却したときの税金
NFTが購入価格より値上がりしたときに売却し、利益を得た場合は雑所得や譲渡所得、事業所得などに所得区分にあてはまると考えられます。
どの所得区分にあてはまるかは、目的や取引内容などで判断する必要があります。
現在の税制や考えかたを使うと、以下所得区分に分けられる可能性があります。
・資産譲渡の特性が強ければ譲渡所得としてあつかわれる可能性があります。
譲渡所得の場合、特別控除が受けられるため50万円までは所得税の発生はありません。
・利益を得るのが目的で、譲渡を繰り返し継続している場合は、雑所得としてあつかわれる可能性があります。
・事業的規模でおこなっている場合には、事業所得としてあつかわれる可能性があります。
販売したときの税金(NFTアートなど)
クリエイターがNFTアートを作成・販売し利益を得た場合には事業性が認められる場合と認められない場合で所得の区分が分かれる可能性があります。
【事業性が認められる場合】
クリエイターとして、継続的にNFTアートを作成販売し、利益を得ている場合は、事業所得としてあつかわれる可能性があります。
なお、販売したNFTが転売(二次流通)されるたびに発生する報酬も同様です。
【事業性が認められない場合】
会社員や主婦が趣味でNFTアートを作成販売し、利益を得た場合は雑所得とあつかわれる可能性があります。
NFTの所得計算のポイント
2021年12月時点では、NFTの利益に関して税制の規定がないため、明確な取りあつかいは発表されていません。
ここからはNFT取引の確定申告で気をつける点をご紹介いたします。
所得計算に関わる情報の記録について
NFTの売買取引では、株式や暗号資産の取引のように証券会社や取引所から取引明細が発行されません。
よって、確定申告する際には損益計算ができるように自身で記録をつけておく必要があります。
NFTの売買取引で損益に関わる必要な情報はすべて記録しておきましょう。
・売買の日時
・売買時の価格、手数料
・売買したNFTの種類、数量
消費税の扱い
NFTの売買は資産の譲渡として消費税の課税対象となる可能性があります。
なお暗号資産の消費税は、既に非課税と規定されております。
参照: [暗号資産に関する税務上の取り扱いについて(FAQ)]
これは消費税法上、支払い手段の譲渡であると判断したためです。
必要経費の考え方
NFTの売買取引で対象となる必要経費は、国税庁から発表されていません。
そのため一般的な必要経費と考えかたとおなじように経費を計上する必要があります。
所得税の計算で計上できる費用は、収入を得るために発生した必要な支出です。
・取引時の手数料(GAS代)
・NFTを作成する際に必要なパソコン購入の費用、ネット回線の利用料
・NFT作成する際に勉強した書籍や研修費
など、NFTの取引に必要な支出であると認められた場合には、必要経費に計上できると考えられます。
まとめ
今後、NFTの税制・取り扱いが発表される可能性は高いと考えます。
もし現在NFTの取引で利益を得た場合は、現行の税制や考えかたで確定申告をおこないましょう。
最新の情報に基づいて確定申告をする必要があるため、所得区分や税額計算でわからない場合には、税務署や税理士に相談するようにしてください。
繰り返しですが、NFTを利用するには、海外の暗号資産取引所を利用する必要があります。
その前提として、海外取引所に資金移動するためには、国内の暗号資産取引所を開設する必要があります。
下記に、2大国内取引所をご紹介しております。是非この機会に開設してみてください。
・コインチェック
【税理士】若原 義敬
2008年に大手の税理士法人に就職後、税理士試験に合格。
その後、ボクシングのプロライセンスを取得し、税理士として働きながらプロボクサーとしての活動を行う。2017年にプロボクサーを引退。
ベンチャー企業の経理を経て、2019年10月に若原義敬税理士事務所を独立開業。